「90才、がんばったね」―母に会いに行った日
2026/08/26
今月、母が90歳になりました。
長男と一緒に、施設で暮らす母に会いに行ってきました。
私は「90歳 お誕生日おめでとう」と書いたうちわを前日にせっせと用意して持っていきました。
母にも「90歳 おめでとう」のうちわを持ってもらって、3人で記念写真。
90歳。
改めて数字にすると、長い年月です。
母は認知症が進んできています。
耳もほとんど聞こえません。
以前は補聴器を使っていましたが、今は補聴器をつけることも、ままならなくなりました。
そして最近は、声を発することもほとんどなくなっています。
話しかけても、私の声は届きません。
母が何を考えているのかも、以前のようには分かりません。
そこで今回は、ホワイトボードを持っていきました。
ホワイトボードに大きな文字を書いて、母に見せながら話しました。
そして、
「90才 がんばったね」
と書いて見せました。
すると、「うんうん」と頷いて、どこか誇らしげでした。

筆談をしているうちに、ほんの少しですが、母が声を発してくれました。
ほんの少しの声でしたが、とてもうれしかった。
楽しい時間は、あっという間でした。
そろそろ帰る時間になり、私はホワイトボードに、
「またくるね」
と書いて、母に見せました。
すると母の目が、うるうるしてきて、私を見つめました。
母は何も言いません。
けれど、その顔を見ていたら、
「私も一緒に帰りたい」
そんな母の声が聞こえてくるようでした。
胸が詰まりました。
連れて帰ることはできません。
私たちは母を残して、施設を出ました。
帰りの車の中で、私は長男に、
「認知症だから、2分経てば忘れるかな…」
と言いました。
長男にというより、自分に言い聞かせていました。
忘れてくれたらいい。
私たちが帰ったことを忘れて、また穏やかに過ごしてくれたらいい。
あの母の顔を思い出すと、今でも切なくなります。
90歳になった母。
今まで当たり前すぎて考えたこともなかったけれど、
母はどんな90年を生きてきたのだろう。
今日、母に会って、そんなことを考えました。





